明けない夜はないという。
出口のないトンネルはないという。
もしそれが本当なら、今は夜明け前の一番寒い時間だ。
夫婦関係の、家庭環境の、いちばん冷えて冷たい時間だ。
トンネルの中で、いちばん陽がささず暗闇のいちばん強い場所にいる。
とうとう明日、離婚届を役所に出しに行く。
戸籍謄本も取り寄せた。
離婚届の証人欄は双方の父親に書いてもらった。
離婚条件を定める離婚協議書も、署名捺印が終わった。
子どもたちにも先週、離婚することを伝えた。
上の子は前から何となく聞いている、と強がっているが、ダメージは計り知れないだろう。
下の子は信じられないと、驚きの表情で首を何度も横に振っていたが、すぐあとで「ゲームが出来ればいいや」と言っていたが、下の子も心的なダメージは計り知れないだろう。
そして、今週金曜には妻がこの家を出ていく。
土曜日の朝から、もう妻はいなくなる。
子どもたちとわずかばかり話し相手になっていた、母親の存在が物理的になくなる。
俺が子どもの立場だったらと思うと、それがどれだけ辛い思いをさせてしまうのか、想像に余りある。
けれど、中身のない結婚生活だったのだと思う。
DVはしたことがない。お金もずっと小遣い制だった。子育ても手伝ってきた。保育園では保護者会の副会長を、小学校ではPTA会長を今やってる。
パパとしては頑張っていると思っている。
けれど、性格が合わなかった。決定的に。結婚して1,2年経ってからずっと。たぶん。妻はそう言ってる。
思えば、この結婚生活の13年間、長かったような、短かったような。
あっという間だった。
そして、二人の子どもたちに出会えたこと。
君たちは、妻が妊娠する前に、お父さんの夢で挨拶してくれたね。
上の子はよくしゃべる子だった。下の子は軽く挨拶するだけだった。
そしたら妻の妊娠が発覚して。不思議な体験ってあるものなんだ。
俺の命をかけて守るべき存在に出会えたこと。
これは妻にも感謝している。
けれど、ずっとすれちがいだった。
お互いの愛情がリンクすることはなく、もうガマンする時代ではないと、妻側からこの家庭を抜けることを切り出された。
そうだ。壊れているものを無理して維持することはない。
つまらないのに、仮面をかぶって続けるよりはずっと自然で、ニュートラルなことなんだ。
そう思えば、もっとも自然な選択をしたのだろうと思う。
何かが詰まって息苦しい毎日を暮らすよりは、思い切ってのびのびできる毎日を暮らしたほうが幸せなんだ、と。
もう妻のことは憎むまい。
2月に離婚を切り出されてから、復縁を試みたり、復縁をあきらめたり、相手と顔をあわすのも嫌になったり、会話そのものが成立しなくなったり、そして今、もっとも冷めた状態から婚姻関係を解消しようとしている。
これは、辛いのではない。
門出なんだ。新しい人生への、門出だ。
だから、幸せなことなんだよ。
子どもたち、いいか。離婚は今だけ見れば辛いことだ。
けれど、のびのびと生きる、自分に素直に生きることは大事なことだ。
お母さんとは会いたいときに会えばいいよ。でもお父さんとお母さんはもう暮らせない。
だから、もう恨むことはしない。
けれど、幸せになってほしい。俺も幸せになるから。
こんなきれいごとを本人の前ではとっても言えない。
だけど、フラットな気持ちになってそう思える今は、感謝したいと思う。
まだ精神的に不安定です。
車を運転していて涙が出てきてしまうこともある。
たまに飲む精神安定剤で安心することもある。
しょうがない。1,2年は控えめに生きるしかないと思う。
けれど幸せになる決意はできている。子どもたちと。
ありがとう。13年寄り添ってくれてありがとう。
それぞれ幸せになりましょう。
さようなら。